迷惑ものが宝になる「害獣ビジネス」

都会ではジビエとして人気の野生動物の肉だが、地方では農作物を食べる害獣として日々苦労を重ねている。害獣被害が拡大する中で、見本となっている「美郷町」の取り組みを特集したYahoo!ニュースの記事を紹介。

農村部での野生鳥獣の被害は、拡大の一途をたどっている。農作物への被害額は現在、じつに約200億円にものぼる。被害の約7割がシカ、イノシシ、サルによるもので、全県でそれぞれ1000万円以上(うち34都道府県は1億円以上)の被害が発生している。1990年代に入り、国内の2大害獣であるシカ・イノシシの数は、異常な増加を見せている。環境省の推定によるとシカは90年の約30万頭から2012年には約250万頭に、イノシシは約25万頭から約90万頭に増えた。どうすれば農作物への被害を食い止め、継続的な害獣駆除ができるのか。そんな難題に挑んだのは、意外にも都市地域の若者だ。

地方で害獣の被害が拡大する背景として、「気候変動」「高齢化」「過疎化」の3点の問題が考えられる。

暖冬で雪が少なくなり、害獣たちの生息域が山から農村部まで拡大した。次に高齢化にともない猟師の数が約40年で1975年の52万人から半数以下の約18万人まで減少。人口に対する比率も0.1%と欧米に比べて極端に低い(アメリカは4~13%、フランスは1.9%、イギリス0.7%)。しかも日本の狩猟者の半数以上が60代以上だ。また過疎化で耕作放棄地が増え、収穫されないまま残った農作物を野生動物が漁りにくるようになり、簡単に食料を得る方法を覚えてしまった。

害獣駆除の先進地域として全国の見本になった美郷町の事例

美郷町では猟友会の駆除班を解体、現在では、200人ほどの住民が農作業の一つとして罠猟を行っている。美郷町で採用されているのは箱罠猟という猟法だ。箱罠猟では、エサで害獣をおびき寄せ、檻に閉じ込め生きたまま捕獲する。その方が衛生的なうえ、新鮮なうちに精肉できる。捕獲、処理、出荷をすべて自分たちで行う組織を作り上げた美郷町には、ここ十年、イノシシの駆除に悩む地域からの視察が引きも切らず訪れている。いわば害獣駆除の先進地となったわけだ。

meat2_160705
そんな美郷町にも少子高齢化の波が訪れる。年々、解体作業を行う人の確保などが難しくなってきており、イノシシの安定供給が危ぶまれていた。人材の確保のためには、売上を伸ばす必要があったが、野生動物という性格上、乱獲はできない。人材を増やしても捕獲量が増えるわけではない。そこで、単価を高くするために付加価値を付けるしかなかった。そこでたどり着いたアイデアは、肉を新鮮な内に調理することができ、流通・保存にも優れた缶詰だった。
meat3_160705
美郷町のイノシシを使った「GIBIECAN」。3種類のうちの、ポトフ(左)、クスクス(右)(写真=ACTUS)

高級缶詰で「天然モノ」の肉に付加価値を

また、ジビエ肉には、新しい可能性がある。都市の若者をターゲットに付加価値をつけるため、「味」にも自信のあるものを作りたいと、依頼したのはフレンチの名店「ナリサワ」で修行経験を持つ「Ata」の掛川哲司シェフ。彼が監修した手作り缶詰は価格1200円から1800円の価格帯、いわゆる高級缶詰の部類だ。掛川シェフが胸を張る。「缶詰は大量につくると、食品衛生上、過度な加熱を繰り返さなければならないので食材が崩れてしまう。でも手作業だと、最低限の加熱で済むので、レストランで出すものと遜色のないものができる」今春、美郷町ではイノシシを使った缶詰を3種類製造、3月末から発売を開始する。工場では、都市部から移住したクイージの社員3名の他に、地元からパートを3名雇い入れた。缶詰工場での生産ラインは、1日約200缶。月4000缶出荷する予定だ。

画像:Yahoo!ニュースから

関連記事

ページ上部へ戻る