富裕層を虜にする特別な体験演出

現代の富裕層は特別な体験ができるサービスを求めている。シャンパーニュをつかった「モノ」より「コト」として、地元の誘客のアイディアの参考にご紹介。

高級シャンパーニュ「ドン・ペリニヨン」は高級酒の代名詞。日本では通称「ドンペリ」で知られ、お金持ちのパーティーや夜のお店で奮発して飲むお酒といったイメージも。顧客層も極めて限定的に思えるが、実はここ数年、売り上げは右肩上がりだ。秘密は輸入元が折々に開く、凝りに凝った顧客向けイベント。「ここだけの経験」「他の人が知り得ない情報」を惜しみなく提供する。そんなドンペリのぜいたくな価値観を味わいたい人の輪がじわりと広がり、1本数万円の高級酒の需要を底上げしている。コト消費が重視される今にあって「提供する価値に妥協はしない」「特別な体験こそ複数の顧客に共有してもらう」という成功のキーワードが浮かんでくる。

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P2のイベント会場となったのは隅田川沿いの撮影スタジオ「ヴァンス」(東京都江東区)東京・江東の隅田川沿いにある撮影用スタジオ「ヴァンス」が6月下旬、期間限定の高級レストランに衣替えした。照明を極度に落としたシックな空間では、シャンパーニュの香りや味わい、内包するエネルギーなどを表すイメージ映像が一角に浮かび上がる。このイベントを主催したのはMHDモエヘネシーディアジオ(東京・千代田)。同社が輸入するドンペリの顧客を招き、シャンパーニュの中でも特に高級な「ドン・ペリニヨンP2」を存分に味わってもらおうという趣向だ。

通常のシャンパーニュは、味を安定させるために異なる品種のブドウやワインを調合する。一方、ドンペリは良質な作柄の年の特級畑でとれたブドウのみを使うため、醸造した年ごとに個性が表れる。これがヴィンテージワインとされるゆえんだ。その中でも「P2」は、16年という長期間熟成させた希少なシャンパーニュで、1998年物で価格は税別5万3000円。今回のイベントはその知名度向上が狙いだ。

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会場では有名仏料理店「NARISAWA」(東京・港)の成沢由浩シェフの料理がふるまわれ、その一皿ごとに10度、12度、15度と温度を変えたP2が供された。2週間限定で参加費は税別6万3000円。ディナーは1日2回、1回あたり20人限定だ。「料理に使われている雑穀などの素材と、温度管理されたシャンパーニュの出合いがとても面白かった」。イベントに参加した医師の河村優子さん(41)はこう話す。

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同様の趣向を凝らしたイベントは毎回、リピーターで満席となる。宇都宮市にある大谷石の採掘場の洞窟で開かれたり、お茶会と日本料理に鼓の演奏を合わせたり、日本庭園を鑑賞する古民家で開かれたりといった具合で毎回、参加者を驚かせる。「一般的なシャンパーニュのイベントは大使館などで開くディナーやパーティーがほとんど。空間や出し物、建築など五感で感じたものが記憶に残るという点で、ドンペリのイベントは別格です」と河村さん。

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参加者は医師や弁護士、個人経営者を中心とする富裕層だ。MHDでは「ドン・ペリニヨンソサエティー」と呼んで顧客を組織化。2011年からさまざまなクリエーターと組み音楽や古典芸能、特別なダンスを楽しむ12~20人ほどの小規模な会や、100人規模のパーティーも年数回開催する。メンバーは徐々に増えて現在は300人ほど。毎回参加する中心メンバーは100人程度いる。「メンバー登録をしていただいている顧客には年に100本くらい購入していただく人もいる」(MHD)。新メンバーの登録は口コミがほとんどだ。

記事:2016年7月29日 日本経済新聞
画像:2016年7月29日 日本経済新聞

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