オリジナル訪日体験プラン活況 ネット旅行会社の取扱件数が急増

訪日外国人観光客の消費志向がモノからコトへ変わりつつある中、インターネット旅行会社が訪日客の体験意欲を刺激するプランづくりに躍起になっている。団体ツアーの定番コースに飽き足らず、自分だけのオリジナルツアーを組みたい訪日客から「英語で説明してくれて、楽しめるものが少ない」との声を聞くからだ。自然環境や伝統文化など観光資源が豊富な日本は体験型ツアーの市場として魅力的で、旅行会社のプラン探しも熱気を帯びている。

東京・神保町のギャラリー「豊國アトリエ」にアルゼンチン人母子が訪れた。訪日客向けに開催している「Sumi-e Class Experience(墨絵おえかき)」(1人2000円、1時間)を体験するためだ。墨絵画家の本多豊國氏が始めた墨絵教室を、息子の優太店長が「難しいことを考えずに、描くことの楽しさを体験してもらいたい」とエンターテインメント性を重視してアレンジした。

母子は、優太氏の英語による説明に耳を傾けながら、見よう見まねで筆を動かしていた。墨で和紙に絵を描く楽しさを知った母親は「大満足。内容も分かりやすく、先生の説明でいろいろと知ることができた」と喜んだ。と同時に「このほかに英語で体験できるものがないので、どこにも行っていない」と不満をもらした。こうした声に応えているのがネット旅行会社だ。墨絵体験は体験型ツアーの予約販売サイトを運営するベルトラ(東京都中央区)が今年4月から取り扱いを始めた。

キアラさんはこのほかにも、相撲の朝稽古、懐石料理、芸者体験、自転車での都心めぐりなど英語で体験できるプランを外国人目線で発掘してきた。同社が集めた体験型ツアーは英語サイトで約3000種類、中国語サイトは簡体字、繁体字でそれぞれ約1000種類という。倉上智晴副社長は「訪日客のうち個人がターゲット。何を体験できるかを重視するので、『一歩先の体験』をミッションに体験型プランを用意している」と品ぞろえに自信を見せる。

 英語サイトでの取扱件数は2014年の133から16年は3000に急増した。団体で定番の観光地を訪れる訪日客ばかりでなく、観光地で何をして楽しむかを重視する旅慣れた個人旅行者が増えてきたからだ。

「都内観光で人気は築地、相撲部屋、寿司づくり」。楽天グループの一員として訪日客向け体験ツアーを提供するボヤジン(東京都渋谷区)の高橋理志最高経営責任者(CEO)はこう語る。ただ最近は地方にも注目。地方創生につながると考える自治体と連携して体験型プランの開発に取り組む。「(東京、富士山、京都、大阪をめぐる)ゴールデンルートは引き続き人気だが、訪日客の誘致に熱心な自治体は少なくない」という。

金沢市もその一つで、楽天トラベルが金沢経済の活性化を目的に結んだ連携協定に基づき企画した6つの体験型プランを扱う。いずれもボヤジンによる現地視察などで選び抜いた金沢ならではの伝統文化や修行体験などを盛り込んだ。中部運輸局からは、政府が訪日客を地方に分散させるため設定した広域観光周遊ルートのひとつで、中部9県の観光資源を紹介する「昇竜道」の体験型プランづくりを依頼された。このうち岐阜県恵那市のサイクリングツアーは、サイトにアップしてから1カ月ほどでシンガポールの家族らが購入した。江戸時代の面影を残した中山道の宿場町や、風光明媚(めいび)な恵那峡などの魅力をアピールしたことが受け入れられたようだ。

電通が20カ国・地域で実施した調査でも、アジアの関心は地方にシフトしていることが鮮明だ。体験したいことも温泉、自然、桜、ローカルフードなど多様化している。電通は地方ブームの背景として「個人観光客のリピーターが増えている」と説明する。

ただ、欧米は日本の伝統に興味をもち、東南アジアと台湾は流行体験、シンガポールや香港は四季を楽しむというように国・地域によって体験したいことが違う。しかも旅のスタイルは各人各様なので、興味をそそる体験プラン探しはつきない。政府は20年時点で訪日客を4000万人に増やし、消費額を8兆円に引き上げる目標を決めた。達成には英語で体験できるプランの拡充が求められる。

記事:Yahoo!ニュース
画像:Yahoo!ニュースから

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