兵庫でも広がるムスリム対応

東南アジアを中心にイスラム教徒(ムスリム)の訪日観光客が増え、兵庫県内の飲食店や食品メーカーが対応に乗り出している。礼拝室を設けた居酒屋が登場する一方、戒律に沿った「ハラル認証」を取得する食品の開発も相次ぎ、経済成長の著しいムスリム市場への輸出拡大を狙う動きも出ている。(末永陽子)

 観光庁によると、2013年に東南アジア5カ国の観光ビザ発給要件が緩和され、イスラム圏のマレーシアやインドネシアなどから訪日客が急増。昨年はマレーシアから約30万5千人(05年比で3・8倍)が訪れ、国・地域別で9位となった。インドネシアからは約20万5千人(同3・4倍)だった。

 兵庫では、世界文化遺産・国宝姫路城のある姫路市で、居酒屋「ゆずの雫 姫路駅前店」が6月末、1日5回祈りをささげるイスラム教徒向けに礼拝室を新設した。室内にカーペットを敷き、手足を清める水を用意。聖地メッカの方角を示す方位磁石も備えた。

 さらに、ムスリムが口にできない豚由来の材料やアルコール類を含まないメニューを開発。ハラル認証を得たしょうゆや鶏肉を使い、定食や丼など6種類を提供する。全国で約100店舗を展開する運営会社は、姫路駅前店をムスリム対応1号店にした。担当者は「播磨地域は対応施設が少なく、需要を取り込みたい」と意気込む。

 また同市の乾麺メーカー、東亜食品工業も2年前、ハラル認証を取得した。国内市場は先細り、地場産の「播州そうめん」を海外に輸出するのが狙い。井上位一郎社長は多くのムスリムの来訪が見込まれる東京五輪も見据え、「認証商品を増やしていく」と話す。

 一方、神戸では高級和牛肉「神戸ビーフ」を売り込む動きが進む。JA兵庫六甲などが出資する食肉加工施設「三田食肉公社」(神戸市北区)は2年前、専用施設を整備。ムスリムの職人が解体前に祈りをささげる。

 加工肉は精肉店「辰屋」(同市中央区)が販売。昨年1月の発売以来、全国から注文が相次ぎ、品薄が続いている。同店は「ハラル認証を受けた和牛は少ない。海外にも販路を広げたい」としている。

■「ハラル認証」めぐり戸惑いも

 イスラム教徒が食べられる食品などを証明する「ハラル認証」。兵庫県でも取得が相次ぐが、認証団体が統一されておらず、二の足を踏む企業もある。

 ハラールメディアジャパン(東京)によると、県内で取得した企業は7社。ヒガシマル醤油(たつの市)やケンコーマヨネーズ(神戸市)などの食品業が名を連ねる。海運・倉庫業の兵機海運(同)は昨年、ハラル製品の安全な保管を目指し、日系企業の倉庫業では初めて取得した。

 しかし、認証に関心があっても取得を見送る事業者も。国内に認証団体が複数あり、規格が統一されていないためだ。

 姫路市内の宿泊施設は取得を検討したが、「認証団体が多くて、どこが良いのか分からない」と断念。数十万から数百万円とされる取得コストもハードルとなった。

 イスラム教徒の宿泊客には戒律に触れない魚料理の提供などで対応しており、「できる範囲でおもてなしをしたい」としている。

記事・画像:神戸新聞NEXTから

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