インフルエンサーマーケティング成功事例『エミレーツ航空』

航空会社にとって価格以外での一番の差別化要素は機内での顧客体験である。しかし、閉ざされた空間であるが故にそれを上手に伝える方法は多くない。特にビジネスやファーストといった上位クラスでの体験は、乗った事の無い人達にしってもらう機会はほとんど無い。
一方で、航空会社はそれぞれの上位クラスにはかなりこだわったサービスを提供する事で顧客の満足度を高めている。しかし、そのサービス内容を、乗った事の無い人達に発信する方法は驚くべき程に少ない。
それもそのはずで、機内はクラスごとにカーテンなどで仕切られ、他のクラスで実際にどのようなサービス体験を受ける事が出来るかが分からない。かといって”お試し”で乗る事も出来ない。そうなると得られる情報は航空会社のサイトやパンフレット、乗った人がソーシャルにアップする写真ぐらいである。
これが例えば自動車であればディーラーでの試乗、レストランであればランチタイムにお得なセットを提供する事で、ユーザーが”お手軽に”高級サービスのお試し体験が出来る。しかし、国際線などの長距離フライトで上位クラスの体験をお試しできる場はほぼ無い。
エクスペリエンスが一番の売りである航空業界にとっては、どのようにプロモーション活動をしたら良いかが現在大きな課題にもなっている。
そんな状況の中、そのグレードとサービスの高さで有名な、エミレーツ航空がとある乗客をビジネスクラスからファーストクラスに無償でアップグレードした。

ドバイ初ニューヨーク行きのこの便のファーストクラスのチケットはなんと約$21,000.

アップグレードしたその乗客は実は…
”なぜ自分がアップグレードされたか謎。人生で最も幸せな瞬間の一つだ”と語ったその乗客にはとある秘密が隠されていた。彼の名前はCasey Neistat. 自身の日常生活での体験を自撮りで撮影し、編集。定期的にその動画をYouTubeにアップしている著名なYouTuberであった。

ファーストクラスを疑似体験
もちろん今回も彼は体験の一部始終を自撮りでレポート。コンパクトに編集されたその動画は飛行機に乗る直前から降りた直後までの一通りの体験の一部始終を個人的な感想を交えながら分かりやすく説明。視ている人はまるで自分がエミレーツ航空のファーストクラスに乗った気分になれる。

約$21,000のファーストクラスをGet!
元々ビジネスクラスのチケットを購入していたCaseyであったが、”なぜか”ファーストクラスにアップグレードされた。ネットでチケットの値段を調べてみると$21,000以上する。差額はなんと$16,000.
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完全個室の座席
エミレーツ航空のファーストクラスは完全個室になっている。しかもドアは自動で閉まる仕組み。これが相当面白かったらしく、ドヤ顔でレポート。
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機内のアメニティに感動
個室の座席にはホテルのようなアメニティとミニ鏡が装備されている。鏡はCaseyの驚くか顔と撮影用のカメラが写る。
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過剰な飲み物設備
お酒などのの飲み物はフライトアテンダントを呼ばなくても座席の横に完備されている。電動で開け閉め可能なボックスを”やりすぎ”とポジティブに説明。
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食べ物のメニューも豪華
お食事は決まった時間では無く食べたい時にオーダーするとシェフが作ってくれる。ファーストクラス定番のキャビアもある。
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キャビアをオーダー
早速キャビアを頼んでみた。じっくり味を噛み締めた後に一言”Salty(しょっぱい)”
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ベッドはキャビンアテンダントがセットアップしてくれる
自分でシーツを敷こうとしたら客室乗務員が全てセットアップしてくれた。
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自宅のベッドよりも心地よい
機内で寝る際にも撮影を怠らない。ベッドと枕が心地良い。
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シャワールームを使ってみた
機内に設けられているファーストクラス専用のシャワールームも使ってみる。完全予約制なので着陸直前の時間に予約。
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他の客にもインタビュー
最後に自分以外の乗客にも”シャワー最高だっただろう?”とインタビュー。総合的な体験をリアルにまとめた。
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$16,000の投資が大きな予想をはるかに上回る結果に

この動画はアップ1週間以内に1,800万回以上再生数を達成した。ビジネスクラスとファーストクラスの差額は$16,000. これがもしマーケティング施策として見た場合、単純計算で1再生に対するコストはわずか$0.0009 (≒0.09円)以下という、驚異的なROIを達成している。
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ちなみに今回はエミレーツによる正式なインフルエンサーマーケティングキャンペーンではなく、”偶然”だと思われる。しかし、”誰”をアップグレードするかはしっかりと認識していたはずで、ブランドマーケティング戦略としては最高の結果を生み出したと言って良い。

今回の成功はその内容の面白さに加え、Caseyが約480万人のサブスクライバーを抱えていた事、この動画が他のニュースメディアに二次的に取り上げられた事も大きな要因だろう。これまでもちょこちょこと写真や動画をアップしているユーザーはいたが、ここまで臨場感溢れる包括的なレポート&クオリティの高い内容を10分以内のコンパクトな動画として作成したユーザーはいない。
YouTubeや他のソーシャルメディア上で影響力のある人に自社のブランドをプロモーションしてもらう、インフルエンサーマーケティングとも呼ばれる手法は以前より注目されているが、重要なのはどれだけ”広告”っぽく無くするか。現代のユーザーはそのコンテンツが”広告”だと感じた瞬間に興味が無くなる。

記事・画像:exciteニュース

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