街なかワイナリーを気軽に体験

街なかでつくりたてのワインを楽しめる醸造所が増えている。ブドウ畑の周辺に立地する一般的なワイナリーに比べて消費者が気軽に足を運びやすく、つくり手の顔も見えやすい。新酒が出回り始める秋。「ご近所産」のワインで乾杯するのも一興だ。

 飲食店などを経営する中本徹さんがワインの醸造事業に乗り出したのは今年6月。自身もワイン好きで「多くの人に醸造風景を見たり、体験したりしてほしい」とワイナリーを構えた。来店者は醸造スペースに入ってブドウの実と枝を分別する作業なども体験できる。

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 深川ワイナリーのこだわりは仕上げ段階でろ過作業をしたもの、しなかったものを両方そろえている点だ。「香りを比べてみて下さい」。グラスに鼻を近づけると、違いは歴然。同じブドウ品種でつくったワインでも、ろ過タイプは「いかにもワインらしい」深みが感じられ、無ろ過タイプはブドウの鮮烈な香りが鼻孔をくすぐる。

 試飲スペースには平日午前からワイン好きが足を運び、週末は団体客も訪れる。生産量は年2万本と少ないが、12~13種類のワインをつくり分ける「多品種・超少量生産」(中本さん)が持ち味だ。

 街なかのワイン醸造に注目が集まるきっかけとなった店舗の一つが、大阪市の繁華街、心斎橋の近くで2013年3月にオープンした「島之内フジマル醸造所」。店内で醸造した出来たてのワインを併設のレストランで楽しめる。特に人気が高いのは、生ビールのようにサーバーからグラスに直接注ぐ「生だるワイン」。価格も白ワインで1杯400円と値ごろ感がある。

 自慢の白ワインは「さわやかでフレッシュな味わい」(同店)。初年度の13年物はワイナリー全体の製造本数が1万5千本だったのが、16年物は3万本に増える見込みだという。

 広島県福山市中心部の商店街で今年8月から醸造を始めた「福山わいん工房」は、スパークリングワインを専門に手がける。シャンパンのふるさと、仏シャンパーニュ地方で料理を学んだ店主、古川和秋さんは「本場のような味わいを実現したい」と意気込む。

 第1弾としてペティアンと呼ばれる微発泡タイプのワインを発売した。シャンパンのように瓶の中で2次発酵させる商品も準備中で、来春ごろにはお目見えする予定だ。

 メルシャンによると、業界は12年ごろ始まった「第7次ワインブーム」に沸いている。大手や中小、そして街なかの小規模なワイナリーが個性を発揮し合うことで、楽しみ方の幅は一段と広がりそうだ。

記事・画像:2016年11月2日 日本経済新聞
サムネイル画像:entrepreneurから

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