旅行予約サイトが最適料金助言 旅館向けにデータ駆使

旅行予約サイト世界大手、オランダのブッキング・ドットコムは日本で、ホテルや旅館の値決めにアドバイスするサービスを提供している。マーケティングの最新技術を使い、東京五輪・パラリンピックによる訪日外国人客増加に対応するのが難しい中小をサポート。サイト構築が簡単なサービスも組み合わせ、予約関連のシステム需要を丸ごと抱え込もうとしている。

 「ツアーの日程はいつなのか」。東京都内のあるホテルの支配人が、スマートフォンに映し出される交流サイトを目を皿のようにして見ていた。人気アイドルグループ、嵐のツアー情報を探していたのだ。ツアーが発表されると、宿泊需要が爆発的に膨らみ、値上げのチャンスとなる。

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 客室の値決めはライバル施設も含めた情報戦。ブッキング・ドットコム日本法人の営業担当者は「中小の宿泊施設の料金設定は従来、勘に頼っている例がほとんど」と話す。料金を提案するシステムはあるが、初期導入費が数百万円する。営業担当者は「中小の宿泊施設にとって導入のハードルが高い」と指摘する。

 中小の宿泊施設でも今後の需要の動きを踏まえ、戦略的に値決めできるようにするのが、日本で本格提供を始めた「レート・マネージャー」だ。初期導入費は不要で、月額費は平均3万円と導入しやすくした。

 自分で戦略的な値決めをしようとする場合、集めるべきなのはアーティストのツアーなどイベント情報だけではない。周辺にある他社の料金も、リアルタイムに調べる必要がある。結局、膨大な時間と労力を費やすことになる。

ブッキング・ドットコムは日本で9300軒の施設と取引し、豊富なデータが強みだ。同社の予約システム上で把握できる宿泊需要の動きや、競合施設の料金の変化など、複数のデータを使って妥当な料金を導き出してアドバイスしている。

 有名アーティストのツアーが発表されると、同社の予約システムで急速に入り始める予約の動きを検知し、新たな料金の素早い提案につなげられる。ツアー情報に常に目を光らせる手間が省け、世の中の動きに遅れて料金の引き上げチャンスを逃してしまうリスクを避けられる。

 旅館やホテルを囲い込むため、レート・マネージャーと並行して、予約サイトを簡単に構築できるサービス「ブッキング・スイート」を販売している。インターネット経由で提供するクラウド方式のサービスだ。

 宿泊施設は管理画面上で表示する文章や写真を簡単に決められる。対応言語を増やすなどの改良も早い。対応できる言語は現在、最大40種類と当初の10倍に増えた。

 岐阜県高山市の温泉旅館「本陣平野屋 花兆庵(かちょうあん)」は1月、ブッキング・スイートを使ったサイトをオープンした施設の1つ。サイトは大ぶりの写真を使い、旅館の雰囲気に触れられるシンプルな作り。花兆庵の担当者は「外国人の好みを意識した作りにできるところがありがたい」と話す。外国人客の比率がこれまでより伸びて3割になっている要因のひとつに、予約サイト構築サービスがあるととらえている。

■旅館の稼働率昨年37%/勘に頼る料金設定限界

 厚生労働省によると、2014年度末のホテル・旅館数は5万2千軒で10年前と比べ20%強減った。旅館が減少しているからだ。旅館は稼働率も低く、観光庁の調査では訪日客が大きく伸びた15年でさえ37%しかなかった。シティーホテルは79%、ビジネスホテルは74%と調査開始以来、最高だった。

 小規模な施設が多く、そもそも予約サイトを作る資金がない。加えて、訪日客が地方で増え続けていけば、勘に頼る料金設定では悩みが増えそうだ。訪日客が急に増加したため料金を上げるのはいいが、国内客が離れてしまうおそれがある。

 旅のあり方が多様になり、旅館の特徴となる料理、設備、料金などへのニーズも一様でなくなった。1泊するけど食事は要らないから安く、といった様々な消費の形がある。それなのに1泊2食付き料金など、旧来モデルにこだわる旅館もある。

 日本全体で見れば訪日客増加の大波のなかにあるものの、後継者不足の問題も重なる中小旅館の経営は難しくなっている。現状から一歩抜け出すためにブッキング・ドットコムのサービスをじっくり見てみる価値はあるだろう。

記事・画像:日経スタイルから

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