観光農園「いちごの里」 イチゴ狩り・完全予約で満足度高く

出荷量最多を誇るイチゴ王国の栃木県では12月にも、イチゴの収穫期を迎える。農業生産法人、いちごの里 湯本農場(栃木県小山市)は観光農園の最大手。同社が手がける「いちごの里」は約150棟のビニールハウスを持つ。顧客満足度の向上へ予約制にこだわったり、収容人数を増やしたりと、工夫を凝らす。収益源を多様化するため加工品も増やしている。

「植える」を体験
 JR小山駅(同)から車で15分ほどのところにいちごの里がある。約7万平方メートルの敷地内に、レストラン、カフェ、直売所、ビニールハウスなどがある。ハウスのうち、栃木県が開発したイチゴの主力品種「とちおとめ」用が70棟、新品種「スカイベリー」用が80棟だ。

 観光客から人気が高いのが9月の定植体験。1人50本、イチゴの苗を植えられる。参加者のほとんどが東京や埼玉のファミリー層で、「子どもに貴重な体験をさせられる」との声が上がる。当初は社内で反対の声もあった。体験後に苗の向きや深さの手直しなど手間はかかるものの、「あえてやらせてみることがヒットにつながった」(生産部の栃木浩一課長)

 イチゴ狩りでは満足度を高めるため、完全予約制にこだわる。1つのハウスの定員は40人で、30分間、食べ放題だ。1週間に6000人の来場を目指している。客を一度案内したハウスには、1週間後まで次の客を入れない。イチゴを摘んでから再び赤い実がなるのに1週間ほどかかる。次の客に完熟の状態を楽しんでもらうためだ。

食べ比べ楽しく
 合理性にばかりこだわるわけではない。「混む時期ほど、楽しいと感じてもらうことが重要」(栃木課長)と話す。直近で成功した取り組みの1つが、通常なら40人1組で1棟のハウスに案内するところ、4組に4棟のハウスを同時に開放したことだ。「ハウスが違うだけで、味まで違う感じがする。食べ比べできて楽しい」「大人数だと遠足気分になれる」と好評だった。収容人数も1割増やせたという。

 昨年の収穫期、2015年12月~16年5月の来場者数は13万人と、過去最高となった。観光農園の収益源であるイチゴ狩りの季節は12月から翌年5月まで。現在、通年で収益を安定させられるような仕組みを構築している。

 その1つが加工品で観光農園でとれたイチゴでジャムやワイン、ケーキ類、菓子などをつくる。直売所などで販売している。これまで外注のワイン以外は全て手作りだった。今年は大福を加工する機械を導入。少しずつ生産効率を高めている。

 いちごの里は完璧に整備されているというより牧歌的な雰囲気が残る。「都内や埼玉からのお客さんはこの田舎っぽい雰囲気も含めて楽しんでくれる。ケーキも、ここで食べるからこそ味わってもらえる」(栃木氏)。

 11月中旬、ハウスの中には赤くなりかけたイチゴがちらほら見受けられた。もうすぐイチゴ狩りの時期を迎えるが、今年も誘客増に向けて知恵を絞る。

記事:2016年11月25日 日本経済新聞
画像:栃ナビ!から

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