アマゾン、ベンチャー育成クラウドファンディング

アマゾンジャパンは18日、起業したばかりのスタートアップを含むベンチャー企業の製品を扱う専門サイト「ローンチパッド(Launchpad)」を立ち上げた。このサイトを使えば、ベンチャー企業はアマゾンの世界的な販売網を使って自社製品を売れる。日本では、足元でベンチャー企業への投資が増えているが、ものづくりの世界で起業を目指す人は少ない。アマゾンは、日本のものづくりベンチャーの救世主となるだろうか。

■7色に光る靴、プロジェクター搭載ロボ……

「個性豊かで興味深い製品を世界のアマゾンの買い物客に紹介する」。18日、都内で開いた記者発表会でアマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長はこう強調した。ローンチパッドは米アマゾン・ドット・コムが2015年に米国で立ち上げた。それ以降、すでに8カ国で展開し、世界1200社のベンチャー企業が利用している。ローンチパッドは、提携するベンチャーキャピタル(VC)が紹介したスタートアップの製品をアマゾンが専門サイトでまとめて紹介。売れた分だけ販売手数料を得る仕組みだ。

 18日からスタートした日本のローンチパッドでは、国内の15社がウエアラブルデバイスや知育玩具を出品している。「靴底が7色に光る靴」「プロジェクターを搭載した家庭用ロボット」など250の商品を販売する。ベンチャー企業が開発した製品は独自性が高く、大手企業の製品にはない特色を持つことが多い。アマゾンには、扱い商品の品ぞろえを増やせる利点がある。一方、ベンチャー企業には、自社で販売拠点をつくったり、配送業務をこなしたりする手間やコストを省ける利点がある。

■ものづくりベンチャーの悩み

「ハードウエア イズ ハード」。起業家やVC関係者のあいだでは、こんな言葉がささやかれてきたという。その意は、「ハードウエア(ものづくり)のスタートアップ企業の立ち上げは、ハード(難しい)」。つまり、インターネット関連ビジネスなどと違い、製造業のベンチャーの経営は困難であり、VCにとっても投資判断が悩ましいということだ。

 実際、日本のベンチャー企業で目立つ存在の多くは、ネット系ベンチャーだ。フリーマーケットアプリ「メルカリ」やニュース配信サイトの「スマートニュース」など、モノを抱えないベンチャーが躍進する一方で、ものづくりベンチャーは壁にぶつかってきた。ものづくりベンチャーの難しさは、パソコン一つで起業できるネット系ベンチャーと違い、製造設備への投資、在庫管理や販路の確保などでお金がかかること。もちろん、これらは手間もかかり、新商品の開発に専念することが難しくなってしまう。日本ベンチャーキャピタル協会の仮屋薗聡一会長は、「ローンチパッドは、ものづくりベンチャーのコストや時間を大幅に減らせる」と語る。

■「起業活動指数」は最下位クラス

 「ベンチャー後進国」と呼ばれる日本でも、官民がベンチャー支援に動き出してはいる。政府は成長戦略の「日本再興戦略」で、起業者や起業予定者の割合を示す起業活動指数、開業率ともに2倍にする目標を掲げる。ベンチャー企業に対するVCの投資額の対名目GDP比も2022年までに2012~14年平均(0.03%)の2倍を目指す。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの調査によると、ベンチャーファンドの新規組成額は2015年度に1932億円と、前の年の2倍超に増えた。ただ、起業活動指数は4.8%と先進国の中では最下位クラス。米国(11.9%)と比べると半分以下の水準だ。

 ベンチャー企業が気軽に使えるインキュベーション施設も国内に数多くあるが、いずれもオフィスの提供などにとどまることが多い。経営へのアドバイスを提供することもあるが、ものづくりベンチャーが求めているのは、販路の確保など具体的な支援だ。技術はある。アイデアもある。カネも集まる。それでも、ものづくりベンチャーが育たない――。そんな状況を打ち破るには、ものづくりの企業ならではの悩みを解決する後ろ盾があったらいい。世界の「ネット通販の巨人」がスタートしたローンチパッドに参加するものづくりベンチャーの中から、新たなスターが誕生するかもしれない。

記事:2016年1月18日 日本経済新聞
画像:YAHOO!ニュースから

関連記事

ページ上部へ戻る