ASEAN訪日客251万人、ハラル対応で伸びしろ

日本政府観光局(JNTO)が17日に発表した2016年通年の東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国からの訪日者数(推計値)は、前年比21.3%増の251万人だった。6カ国いずれも過去最高を更新した。ASEANからの旅行者数は世界全体の1割強にすぎないが、ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)対応を含めたASEANからの誘致を強化することが伸びしろの確保につながり、観光業を含む日本経済の活性化に貢献しそうだ。

世界各国からの旅行者数は前年比21.8%増の2,403万9,000人と、2,000万人の大台を突破した。東アジア主要4カ国(中国・韓国・台湾・香港)からは、23.1%増の1,746万9,900人だった。年央に進んだ円高や15年の大幅な伸び(47.1%増)の反動減が懸念されたが、日本旅行を選ぶ動きが依然として根強いことが示された。旅行者の消費総額は7.8%増の3兆7,476億円。前年の71.5%増から伸び率は大幅にダウンした。中国政府が帰国時に課す携行品関税引き上げを4月に実施し、「爆買い」が一段落したことが大きい。

1人当たり消費額では11.5%減の15万5,896円で、前年の16.5%増からマイナスに転じた。観光庁によると、円高の影響が大きく、現地通貨ベースでみると、中国以外はおおむね増加しているという。

■4千万人に目標拡大
JNTOは2003年に「ビジット・ジャパン」の観光キャンペーンを開始。同年の521万人が、倍増の1,000万人超えとなったのは13年だが、わずか3年でさらに倍増した。政府は2016年3月、「明日の日本を支える観光ビジョン」で訪日客倍増を打ち出し、20年に4,000万人、30年に6,000万人を目指す。しかし、首都圏のホテル不足による地方への誘致、1人当たりの滞在日数を増やすロングステイの促進、消費額拡大につながる上質な富裕層の取り込みなど「量より質」も課題となっている。

JNTOインバウンド戦略部の青島美奈子氏は、「訪日者の量的拡大を追うことも重要。拡大によって、東京~富士箱根~京都~大阪のゴールデンルートだけでなく、日本らしさが残る地域での住民との交流、消費額の高い富裕層などへのVIP対応など、ツーリズムが多様化し、日本経済が活性化するきっかけになる」と話す。各地を訪れる外国人旅行者が増えていく中で、自治体や関係者が「持続可能な観光産業」という視点を持ち、単価を上げつつ訪問者数・利用者数を制限し観光資源を守る動きも出てきそうだ。地方へのロングステイを増やすには、地方旅館・温泉で宿泊料と夕朝食の料金を明確に分ける「泊・食分離」で、宿泊客のオプションを増やすことも鍵になるという。

■ムスリム客の判断に任せる
「本物の日本食」に触れた旅行者が母国でも和食に親しみ、日本ブランドの浸透や日本産品の輸出といった相乗効果を生み出すことが期待される。訪日客誘致で最も注目されているのが、査証(ビザ)緩和を追い風に日本への関心が高まっているASEANからの旅客。中でも、ハラル対応が、訪日客拡大の試金石になると青島氏はみる。これまで、インドネシアやマレーシアからの訪問者は比較的裕福な華人が多かったが、ボリュームゾーンを狙うには、イスラム教徒(ムスリム)の誘客が鍵となる。近年、日本でもムスリム旅行者の受入時に際したハラル対応についての認識が広まりつつあるが、ムスリムが不安に思うのは食材や調味料の内容がわからないこと。非イスラム国を訪問する際に、禁忌(タブー)を許容する・しないを決める基準も旅客によって異なるだけに、情報開示と個人の判断を尊重することが大事だという。

■タイはモデルケース
JNTOのASEAN拠点は、バンコクとシンガポールだったが、14年にジャカルタで開設したのを皮切りに、今年以降クアラルンプール、マニラ、ハノイにも新設する。旅行会社や現地の人へのプロモーションと共に、日本人の商習慣や風習・文化への理解を深める活動を展開する。

訪日客でASEAN首位のタイではリピーターが増え、団体から個人旅行へとシフトした。食事ではカニを重視するといった目的も多様化。ドラマをきっかけに佐賀県への訪問が増えるなど、ゴールデンコースだけではない特定の県へも足を伸ばすのが特徴となっている。ASEAN他国でもいずれ、タイのように多様化するとJNTOではみている。インドネシアでは、数年前まで、現地の地場旅行会社がホテル客室を確保しないままツアーを販売し、直前になって客室が確保できないなどのトラブルが発生したが、現在では事前手配が必要だということに対し、理解が進んできている。

■インドの受け入れも鍵
ASEANの次は、将来は世界最大人口国となるインド市場の攻略だ。インド人は一般に、訪問国の料理へのこだわりが少なく、日本でもインド料理を求める傾向がある。食以外の日本の魅力の売り込みが課題だが、日本のホテルや自治体は、ベジタリアン対応を含めインド人への対応ができず、消極的という。JNTOは、デリー事務所開設に向けて準備を進めている。それだけに、どのような売り込みを展開して日本に行きたいと思わせる仕掛けを作るか、注目が集まっている。

記事・画像:NNA
サムネイル画像:アセナビから

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