「観光大国」に3つの壁 税関・宿泊施設・MICE

日本政府観光局は19日、3月の訪日外国人客が前年同月比9.8%増の220万5700人だったと発表した。3月単月として過去最高を更新。1~3月の累計では13.6%増の653万7200人となった。みずほ総合研究所の予想では、2017年通年の日本の訪日客数は前年比16%増となり2800万人となる見込みだ。それでも世界各国・地域で比較すると、11位のタイ(15年時点で2990万人)より少なく、首位のフランス(同8450万人)や2位の米国(同7750万人)の背中はかなり遠い。政府が20年の目標とする4000万人を達成し、「観光大国」となるためには超えるべき3つの壁がある。

■税関職員、5年でわずか5%増

 まずどの旅行者も入国時に通るのが税関だ。17年度の税関職員の定員は約9200人。訪日客が過去5年間で3倍超増えたのに対し、定員は5%しか増えていない。クルーズ船で数千人の訪日客が一気に到着する港では、入国検査を待つ人だかりができる光景が日常になっている。 税関は訪日客の利便性を高めるだけでなく、テロリストの入国や輸入禁止物の持ち込みを防ぐ機能も持つ。治安維持機能が損なわれれば、日本が持つ“安心・安全”のイメージ低下にもつながる。税関機能の強化は欠かせない。

■宿泊施設不足、民泊のハードルも高く

 観光、出張と目的を問わず宿泊施設も旅行の重要な要素だ。日本では宿泊施設の不足も受け入れ拡大の課題といえる。みずほ総研がまとめた20年のホテル不足の試算によると、ホテルの新規開業が相次ぐ東京都では900室の客室が余る一方、大阪府では7700室が不足する。ただ、訪日客が想定より増えれば、東京は不足に転じ、大阪はさらに不足する。みずほ総研の宮嶋貴之主任エコノミストは「人手不足で従業員が確保できなかったり建設が遅れたりすれば、予定通りにホテルが開業できず客室不足は解消されない」と指摘する。不足を解消するには民泊の普及や受け入れ余力がある地方に訪日客を分散させることなどが必要になる。

 1つのカギは日本でも規制緩和の議論が進む民泊だ。15年に6820万人の外国人訪問者数を受け入れた世界3位の観光大国スペイン。今では民泊の部屋数がホテルを上回るまでになった。宿泊予約サイト「ブッキング・ドットコム」で主要都市を検索すると、人気上位は個人のアパートが占めている。バルセロナに住むパスカルさんの部屋は宿泊サイトで、10点満点で9点以上の高評価を受けている。バルコニーからサグラダ・ファミリア教会が見える好立地に加え、「友達の部屋にふらりと泊まりに来た感覚を大事にしている」(パスカルさん)

■国際会議・見本市も欧米が先行

観光以外にもリピーターを増やす手段はある。欧米で盛んなのが、国際会議や見本市、報酬旅行など「MICE(マイス)」だ。国際会議協会(ICCA)がまとめた15年の国際会議統計によると、世界で開かれた会議は1万2076件と前年から571件増えて過去最高になった。日本は18件増えて355件とアジア・オセアニア・中東では首位に立つ。ただし日本の世界での順位は7位。首位の米国(925件)以下はドイツ(667件)、英国(582件)、スペイン(572件)と欧州諸国が続く。経済の中心がアジアにシフトしてきたとはいえ、欧米が先行しているのが現状だ。

MICEの場合、開催都市のホテルや飲食店はもちろん、会議や見本市の設営、説明員の派遣まで経済効果は広がる。さらに、会議の前後に会場から観光地に寄ってもらう副次効果も見込める。世界最大の携帯電話見本市があるバルセロナは「モバイルのバルセロナ」など、都市としてのブランドを世界に発信している。施設も重要だ。ドイツでは万博会場をそのまま見本市に使い世界最大の面積(約45万平方メートル)を誇るハノーバーをはじめ世界の規模上位が集まる。観光までの案内も充実し、MICEが観光戦略にしっかり組み込まれている。日本の場合、欧米に比べ施設が手狭なのに加え、英語を流ちょうに話せるスタッフの確保などの課題もある。

■日本の競争力は世界4位

 日本の観光力の底力は大きい。世界経済フォーラムがまとめた17年の旅行・観光競争力ランキングで、日本は世界4位となり前回15年の9位から大きく順位を上げた。「客の待遇」などに加え、文化や自然資源への評価が高い。さらに強みを伸ばし、弱点を克服すれば「観光大国」に近づける。

記事・画像:2017年4月19日 日本経済新聞から
サムネイル画像:観光庁から

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