重要文化財の監獄ホテル

法務省は明治時代に造られた五大監獄の一つで赤レンガの名建築で知られる旧奈良監獄(奈良市)の運営権を、清水建設など8社のコンソーシアム(共同事業体)に売却する方針を決めた。2020年をメドに重要文化財の監獄を生かした全国初のホテルに生まれ変わる。歴史的建造物の保存と観光資源としての活用を両立する取り組みとして注目を集めそうだ。

ホテルなど宿泊施設の少ない奈良にとっては、インバウンド(訪日外国人)などの受け皿となり、観光振興の起爆剤になるとみられる。

26日発表した。優先交渉権者は、「チサン」ブランドなどのホテルを運営するソラーレホテルズアンドリゾーツ(東京・港)を代表企業とするコンソーシアム。清水建設、近畿日本ツーリスト、デザイン会社のセイタロウデザイン(東京・品川)など8社で構成する。8月に実施契約を結ぶ。

旧奈良監獄は奈良少年刑務所として運用してきたが、耐震性の問題などから、3月末に閉鎖された。

コンソーシアムが提案しているのが体験型複合施設だ。旧奈良監獄を耐震補強しつつ、必要最小限の改修を施す。重要文化財のため、文化庁の許可を得て、独房などを客室に改装。敷地内に別にホテル棟を新設し、客室は約290室確保する。10万6千平方メートルの敷地内にはレストラン、カフェバー、イベント空間、コミュニティーセンターを配置。天然温泉の温浴設備も設けるという。総事業費は150億円強の見通しだ。

 法務省の要請に応えて「建築行刑史料館」も設置する。旧奈良監獄が担ってきた役割や行刑・矯正の歴史を展示で分かりやすく伝える。史料館はホテルに先行して19年10月に開館する予定だ。法務省は公共インフラの所有権を国に残しつつ運営権を民間に売却するコンセッション方式で、活用を模索。博物館、史料館、ホテルなどへの転用を探っていた。

奈良を訪れる観光客は奈良公園内にある東大寺や興福寺に集中する一方で、奈良県庁の北約1.5キロにある旧監獄周辺を訪れる人は少ない。ホテルなどが少ない奈良県は宿泊需要も低迷し、16年の宿泊者数は244万人と全国で2番目に少ない。大阪府の7.8%、京都府の13.5%にすぎない。関西観光は大阪、京都を中心に動くケースが多いだけに、奈良に魅力あるホテルができれば宿泊需要も掘り起こせる。国が民間のノウハウを利用し、文化財の保存と活用を目指す新たな試みで、奈良や関西観光の活性化につながりそうだ。

記事・画像:2017年5月17日 日本経済新聞

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