文化庁、観光発信を支援 「物語性持って紹介を」

文化庁は文化財保護から活用重視に軸足を移している。歴史や文化を生かした街づくりへの助成もこの一環だ。同庁は地域の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として認定している。人材育成や普及啓発を支援し、有形無形の文化財を地域主体で総合的に整備・活用する。「物語性を持って点在する文化財を紹介できれば発信力が高まる」(地域文化創生本部)。訪日客増加と相まって、京都などに偏っていた観光人気の広がりが期待できる。市町村では文化財を教育委員会から首長部局に移管し、街づくりや観光の施策との連動性を高める動きも広がる。近畿では2015年に奈良県が「文化資源活用課」を新設し、全国有数の研究機関の県立橿原考古学研究所を県教委から移した。知名度の低さなどが響き、歴史・文化を生かし切れてない自治体は多い。市町村の文化財保護と観光振興の部署で連携するなど縦割りを排し、柔軟な発想を生み出す工夫が求められそうだ。

兵庫県朝来市は昨年3月に基本構想をまとめた。同市は国史跡の竹田城跡が有名だが、織田・豊臣・徳川家の財源を支えた生野銀山を積極活用する。生野銀山跡は現在約1キロメートルの観光坑道となっており、採掘のノミの跡が残る。歴史の面影を生かし、ボランティアガイドによる約1時間の坑道案内ツアーも企画している。坑道に近いミュージアムには銀細工体験の工房があり、決まったデザインから選んでペンダントを作る「お手軽体験コース」(2000円)などを利用できる。

大阪の自治体で参加した河内長野市には国宝6件と重要文化財79件がある。観光案内ボランティアの養成講座に16年度から、地域に縁の深い密教などの文化を教える講義を取り入れた。17年度内に作る同市の観光案内にも盛り込む予定だ。市内の寺院には観光バスが訪れるが、見学後すぐ他市町の名所に向かう例が多く滞在時間は短い。「密教文化を題材にしたツアーで市内を巡回してもらえば経済効果が期待できる」(ふるさと文化財課)としている。

港の歴史を活用するのは京都府舞鶴市。旧海軍ゆかりの造船所や赤れんが倉庫が名所だが、16年度から遊覧船に乗り、シベリアなどから日本人が引き揚げるための港となった歴史を学ぶコースを新設した。17年度内にも基本構想をまとめる。

奈良県桜井市は15年にまとめた基本構想で「長谷寺と門前町地区」などの6カ所を保存活用のモデル区域に選んだ。調査・研究や景観整備、情報発信を中長期で進める。市の担当者は「空き地の公園化やトイレ整備も課題になる」と話す。

関西の自治体が文化財活用を急ぐ背景には他地域の自治体の成功例もある。説明会では広島県尾道市や宮崎県日南市の先進事例が紹介された。尾道市には港町として文化的景観がある。同市の基本構想を受け、日本遺産に認定された旧市街地では12年度からの10カ年計画で道路を石畳風にしたり街灯を整備したりしている。明治・大正・昭和初期の歴史的な建造物の修復には補助金を出す。説明会ではかつて瀬戸内海で勢力を振るった「村上海賊」などを生かす施策も紹介された。

記事:2017年6月13日 日本経済新聞
画像:forbes

関連記事

ページ上部へ戻る