旅の決め手はインスタ映え

おしゃれな写真で注目を集めたい――。旅行や遊びの行き先を、撮影できる写真で決める若者が増えている。撮った写真はSNS(交流サイト)で発信。写真を通して、理想の自分をアピールする。有名な撮影ポイント「フォトスポット」には行列ができる人気ぶり。人気の撮影地を巡るツアーが出来たり、商品の宣伝に利用したり企業も動き始めている。

「新宿にいることを忘れちゃうね」ルミネエスト新宿店(東京・新宿)の屋上にある飲食施設、ワイルドビーチを訪れた20代の女性2人組は目を輝かせる。一面に広がる白い砂浜はさながら外国のリゾート。食事もそこそこに写真撮影にいそしむ女性も。

 運営会社のリクリエーションズ(東京・渋谷)の原田康弘社長は「若い女性受けするようにとにかく徹底的におしゃれさを追求している」と語る。実際に顧客の半数以上が女子会利用。平日の昼間も満席が多く、7月上旬時点で昨年まで同スペースにはいっていたビアガーデンの倍程度の売り上げを記録している。

 「ねえ、ここすごくインスタ(インスタグラム)映えすると思わない?」。都内の会社員、宮本瑛未さん(26)は友人とのドライブの行き先を写真共有アプリ、インスタグラムの投稿をみて決めた。選んだのは川崎市のガーデニングショップ「ソルソファーム」。広い敷地内にカフェもあり、おしゃれな雰囲気が若い女性に人気を集めている。担当者によると「インスタグラムの投稿をみて来園する人が増えている」という。

 若者に人気の街、東京の原宿では写真を撮ろうと若い女性の行列ができていた。行列の先は日比谷花壇(東京・港)が運営する結婚式場「原宿セント・ヴァレンタイン教会」のハートの壁。壁を背景におしゃれな写真が撮れると話題になっている。撮影のため地方から訪れる人も少なくない。同教会の林瑛子氏は「教会で挙式するカップル向けに設置したが、口コミで話題となり連日人が押し寄せるようになった」と話す。

 教会内にも新郎新婦向けの撮影スポットがある。一般の人から撮影したいという声が増え、今年2月から月に1回、有料の撮影イベントを実施。5月の連休中は2日間で合計600人が訪れた。

 「どう生活したいかではなく、SNSでどう見られるかを考えて日常生活の行動を決める人が増えている」。博報堂キャリジョ研の滝川千智氏は指摘する。ある20代の女性は大阪旅行の予定を「イメージに合う写真が撮れない」という理由で出発前日に行き先を京都に変更したという。

インスタグラムのメインユーザーは、トレンドに敏感で消費をけん引する「F1層」(20~34歳の女性)と重なる。「インスタグラムで注目されることは企業に大きなメリットがある」(滝川氏)。実際に企業もインスタグラムを意識した商品開発を強化している。

 旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)は、3月からインスタグラムで話題になっている場所を訪れる「タビジョツアー」を販売している。旅行先は韓国やバリ島など多彩。営業戦略室の丹下陽一郎氏は「SNSに投稿する写真を撮るために海外旅行に行く女性が増えていることに目をつけた」と話す。ハワイにはドローン撮影を組み込んだコースも用意している。

話題の観光スポットは一般的な観光名所ではなく、交通の便が悪いことも多い。タビジョツアーはシャトルバスを出すなど撮影スポットを逃さない内容。通常のツアーと比べ割高だが、予約は順調という。

化粧品ブランドのイヴ・サンローラン・ボーテは新製品の発売に合わせてSNSを意識したイベントを開いている。会場にはプロのカメラマンが撮影してくれるフォトブースや新製品を使ったオブジェなどSNS映えするスポットを多数用意。「『こんなにすてきな場所にいる』と参加者たちが自主的に投稿して自然と拡散される」(イヴ・サンローラン・ボーテコミュニケーションマネージャーの田尻梢氏)という。宣伝効果は大きく、イベント実施前と後で比べると売り上げが大きく伸びるという。

記事・画像:2017年7月13日 日本経済新聞

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