出雲大社の地元、「滞在型」の観光地へ

縁結びで知られる出雲大社のお膝元、島根県出雲市が滞在型観光地への脱皮を目指している。「平成の大遷宮」があった2013年以降、観光客数は高水準を維持しているが、宿泊者数が伸びていないためだ。今年4月に同市の海沿いの景観が日本遺産に選定されたことなどを追い風に、日御碕(ひのみさき)など周辺観光地への周遊を促す事業をスタートさせる。

 「昨年、出雲市を訪れた観光客のうち市内に宿泊したのは全体の5%、62万人だった」。先月27日、出雲大社近くのリゾート型宿泊施設の発表会でこう指摘した出雲市の長岡秀人市長は「近いうちに100万人に増やしたい」と宣言した。

 背景には市内で相次ぐ大型宿泊施設の開業がある。共立メンテナンスが今月1日、出雲大社から徒歩8分の場所に高級温泉旅館「いにしえの宿 佳雲」と和風ホテル「お宿 月夜のうさぎ」をオープンした。合計の部屋数は160室。15日にはJR出雲市駅南口に部屋数185の「ドーミーイン出雲」開業が控える。

 出雲市への13年の観光客数は1575万人で、869万人だった11年の1.5倍以上に増えた。平成の大遷宮が執り行われた出雲大社が脚光を浴びたためだ。14年以降、勢いは衰えたものの、若い女性の間での「縁結びブーム」定着もあり、16年も1200万人近い観光客を集めた。

 ただ、宿泊客数は11年から3割しか増えておらず、観光客の伸びを下回る。市内での宿泊率も約2割の松江市などと比べて低水準だ。出雲大社の周囲には観光バスや自家用車を止められる無料駐車場が多く、大社の門前町「神門通り」を歩かなくても参拝できる。ほとんどの観光客は出雲大社を参拝すると松江市などに向かってしまう。

 そこで出雲市は「日が昇る」伊勢(三重県)に対する「日が沈む聖地」として「日本遺産認定効果」に期待を寄せる。16日からは金・土曜日を中心に日御碕神社や日御碕灯台を巡る「夕日鑑賞バス」の運行を始める。出雲大社には静かな早朝の参拝を提案する。出雲観光協会は土・日曜日に、ガイドとともに午前7時半から境内を歩くプランを企画した。

 市観光課の橋本孝課長は「夕日鑑賞や早朝参拝といった宿泊しなければできない体験を訴え滞在時間を延ばしてたい」と話す。出雲大社周辺の店舗でつくる「神門通りおもてなし協同組合」の田辺達也理事長は宿泊者が増えれば神門通りを歩く人が増え、にぎわい創出につながる」と相乗効果に期待をにじませる。宿泊施設の開業など市長の目標達成を後押しする動きがあるものの、大社周辺は夜に営業する店舗がほとんどなく、周辺観光地を巡るバスの本数が少ないなど課題も残る。観光客に「泊まりたい」と思わせる街へ地道な取り組みを続けていく必要がありそうだ。

記事:2017年7月12日 日本経済新聞
画像:島根観光ナビ

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