スイス金融機関、超富裕層向けセミナーで囲い込み

資産50億円以上の超富裕層は「ウルトラ・ハイネット・ワース」と呼ばれ、世界的にファミリービジネスの創業者一族が多くを占める。伝統に強みを持つスイスの金融機関は、長い時間をかけてこうした層と信頼関係を構築してきたとされる。ひと味違うイベントなど、サービスの一端をのぞいた。

■1国1ファミリー限定のイベント
チューリヒに本拠を置くUBSは世界約50カ国でビジネスを提供している。富裕層向けのマネジメントに力を入れ、ウルトラ・ハイネット・ワース向けには専門部門を持つ。 毎年スイスで開く「ファミリートランジションプログラム」は、この層向けに3日間の日程で開催するスペシャルなプログラムで、ファミリーの価値観やミッションなどをテーマにしている。気兼ねなく話してもらう狙いから、参加は1国1ファミリーに限定。このため、毎回世界中から超富裕なファミリービジネスの関係者が集まるという。参加人数は非公表だが10~30人ほどとみられ、テーマに合わせてUBSが招待する。開催地は都市部から離れた高級リゾートが多い。イベントを通じて、ファミリーのビジネスを円滑にするためのインスピレーション獲得やこの層間でのネットワークなどをサポートする。

 超富裕層だけに、円滑な事業承継に対する関心は非常に強い。このためUBSの場合、10年以上前から、世界中のこの層の後継者を対象にしたプログラムをスイスで開催してきた。対象はおおむね20~25歳であり、超富裕なファミリービジネスの子弟だけが集まる。1週間以上のサマープログラムだが、これまでに日本から参加した人もいるという。こうした層のキーワードの一つが「インパクトインベストメント」。社会貢献的な意味合いの強い分野への投資をしながらリターンもあきらめないこと。中東のファミリービジネスの後継者から「美術館をつくるのはどうしたらいいのか」という質問が出たのを契機に、オランダから参加した後継者との共同のプロジェクトに発展するケースもあった。

 地域ごとのイベントにも力を入れており、最近アジア太平洋エリアで開いた少人数限定セミナーでは、イタリアのフィレンツェからメディチ家の末裔(まつえい)を招いた。同地域のファミリーアドバイザリーサービスの責任者、エリック・ランドルト氏は「顧客にとっての財産とは金融資産だけでない。そこにはファミリーとしての社会貢献などのパッションやレガシーも含まれる。だからこそ、当社としてもこうした取り組みが大切」と説明する。後継者を対象にしたイベントでは、中国、台湾、香港の25~30歳の後継者を対象にロックフェラー家の子女を講師として招いたこともある。後継者向けのプログラムは、単発でなく1年をかけて実施。終了後も引き続きメンバーとして活動する。

記事・画像:2017年9月13日 日本経済新聞

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