隠れた逸品「食べる通信」

食べ物付き情報誌「食べる通信」が全国に広がっている。各地の隠れた産品を作り手のこだわりの仕事ぶりとともに読者に届ける。東日本大震災をきっかけに東北で2013年に誕生。発行地域は北海道から沖縄まで38カ所、多彩な経歴の編集長が奮闘する。

「釣れた!」。山あいの自然体験施設「いわなの郷」(福島県川内村)に歓声が響く。「そうま食べる通信」(福島県)は9月上旬、訪問ツアーを開いた。夏号で「いわなの郷」を特集、魚を届けたところ、読者から実際に訪ねたいという声が上がった。東京近郊から約20人が参加した。

福島県相馬市の漁師・菊地基文さん(41)と建設会社社長・小幡広宣さん(41)が共同編集長。相馬出身の同級生コンビだ。相馬市は福島第1原発に近く、東日本大震災が日常生活を変えた。「漁に出ても水揚げは10分の1、魚価も落ちた」と菊地さん。福島産というだけで敬遠される。

 「俺たちに何かできないか」。生産者に光を当てる「食べる通信」を知り、飛びついた。「生産者の顔が分かれば買ってくれる。福島ファンを少しずつ増やしていきたい」(小幡さん)

 「食べる通信」の発案者は元岩手県議会議員の高橋博之さん(43)だ。震災直後に都市住民がボランティアで東北を訪れたが、都市と地方の交流を続ける方法はないかと考えた。農産物などを届ける「東北食べる通信」(岩手県)を13年7月に創刊した。

すると被災地に限らず、1次産業の衰退に悩む地域から「うちも出したい」と相談が相次いだ。仲間を広げようと14年4月に一般社団法人「日本食べる通信リーグ」を旗揚げ。加盟料と売り上げの一定額を納めると、決済や購読者管理をリーグ事務局が代行する。「志を同じくする仲間の集まり」と高橋さん。運営方針は編集長の合議で決め、悩みやノウハウも共有する。装丁や発行頻度は各地で異なり、価格も2000~3980円と幅がある。

食べ物付き情報誌には、購読者をむやみに増やせない難点もある。取れる産物の量が限られるためだ。発行部数が最多の「東北食べる通信」でも定期購読者は約1200人。中には100人ほどの媒体も。高橋さんは「やりたいのは宅配ビジネスではない。生産者と消費者が互いに顔の分かる関係を築けるような手助けだ」と強調する。

記事:2017年9月20日 日本経済新聞
画像:Goodデザイン賞

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