地域ブランド ヒットのカギは「物語性」

<高級マグロの一本釣りで有名な青森県大間町>
交通の便は非常に悪く、観光客もちらほら。最果てのイメージがぴったりだが、地域ブランドの観点では最も成功した地域と言ってよい。

 映画「魚影の群れ」(1983年)やNHKの連続ドラマ「私の青空」(2000年)などを通じて豪快なマグロ漁が知られるようになり、漁師たちの奮闘はドキュメンタリーでもたびたび取り上げられてきた。

 大間マグロのブランド力も徐々に高まり、今では築地市場の初セリで高値がつく様子は正月の風物詩となっている。

 大間マグロのブランド力の源泉は高品質や希少性によるところが大きいが、それにも増して「感動的な物語性」がより重要な役割を果たしているように思えてならない。

 主役である漁師本人はもちろん、彼らを支える家族や流通関係者、飲食店など大間マグロに関わる大勢の苦悩や歓喜に共感できるから、その物語に触れた人々の感情を揺さぶるのだろう。

 実は大間マグロが世に出るきかっけになったのは小説家の吉村昭が1973年に発表した短編小説。それを原作にした「魚影の群れ」が映画化されてヒットし、広く知られるようになった。

 当時の吉村氏は厳しい自然と対峙する人物像に関心があり、全国を取材する中で大間のマグロ漁師と出会い生き様に魅了されたらしい。まさに大間マグロのブランド化の原点は「これを描きたい」と作家を感動させた物語性にあったわけだ。

 今日、多くの地域産品がブランド化を指向して高品質やユニークさを競っているが、それだけでは困難なことをこのエピソードが如実に語っているのではなかろうか。

記事・画像:2017年10月26日 日本経済新聞

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