地方発ヒット「行かないとわからない」で人は動く

■食と芸術の祭典に26万人
 「行かないと得られない体験」が得られるのが、宮城県石巻市を中心に開催された「リボーンアート・フェスティバル2017」。市内の施設だけでなく、海岸や林などさまざまな場所に、50点以上の立体的なアート作品を展示。来場者はバスなどで移動しながら、石巻の風景とともに作品を楽しむ。全部見るには2~3日必要だ。併せて80組以上の音楽家が日替わりでコンサートを開催した他、国内外の有名シェフ約30人が、牡鹿半島の食材を使った特別料理をふるまうという仕掛けも用意。東日本大震災の被災地でもある人口約15万人の街に、51日間で延べ26万人が訪れる、現代アート展としては異例の成功を収めた。

■『君の名は。』聖地の人気は衰えず
 映画の場面やロケ地を訪れる「聖地巡礼」も、体験型の一つ。岐阜県飛騨市では、16年に大ヒットした映画『君の名は。』の勢いが続いている。DVD・ブルーレイ発売直後の夏休みとなった17年8月には、過去最高の1万4500人が訪れた。「口噛み酒」をモチーフとした渡辺酒造店の日本酒「蓬莱 聖地の酒」なども好調だ。アニメ映画関係では、『この世界の片隅に』の広島県呉市、『ひるね姫~知らないワタシの物語~』の岡山県倉敷市にも多くのファンが訪れている。

■対象を具体的にした「地元の味」
 地方発ヒットのヒントとして地方の味とクラウドファンディングにも注目したい。
16年の「47都道府県の一番搾り」(キリンビール)のヒット以降、「地方の味」に注目した製品の発売が相次いでいる。単に地元の食材を使うのではなく、「博多 鶏の水炊き風」といった具合に、特定の料理を別の食品で表現するのが17年の傾向だ。

 なかでも多く売れたのは、「サッポロ一番 和ラー」(サンヨー食品)。「津軽 帆立貝焼き味噌風」のように、汁物でない料理までラーメンにして話題をさらい、5種類で1600万個を販売。17年10月から第3弾が始まっている。

47都道府県で展開するのは、カルビーのポテトチップス「♥JPN」。同社は16年、福島県出身の伊藤秀二社長のアイデアで、福島の郷土料理「いかにんじん味」のポテトチップスを限定販売したところ、県内だけで79万袋を販売するヒット商品になった。そこで17年9月から全国に展開。滋賀県の「鮒ずし味」や、山形県の「芋煮味」など、奇抜な味が注目されている。

■クラウドファンディング初の鍵型ツール
 もう一つ、新たな地方発ヒットで外せないのが、クラウドファンディングの影響だ。この仕組みは全国的な需要調査が手軽にできるので、地方企業にこそ向いているといえる。成功例の一つがツカダの鍵形ツール「キークエスト」。普通の鍵のサイズに6つの機能を詰め込んだ。「刃物の町」として知られる岐阜県関市のプレス加工会社が、初めて消費者向けの商品を企画。クラウドファンディングサイトのMakuakeで支援を募ったところ、760万円以上が集まった。16年10月に正式発売して、1万3000個を売り上げている。

記事・画像:NIKKEI STYLE

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