偶然のパレット、未知の色「青い池」

北海道の中央に位置し、今も雪がうっすら残る十勝岳や豊かな新緑の森に囲まれた美瑛町。スキーリゾート地、富良野に隣接する人口1万人余りの小さな町だ。シンプルなネーミングの「青い池」には国内外からひっきりなしに観光客が押し寄せている。

天気によって水面の色が変わり、晴天の日は青さがひときわ映え、鏡のように木々を映し出す。立ち枯れたカラマツとの幻想的な景観がスマートフォン(スマホ)の壁紙に採用され、5年ほど前から観光客が爆発的に増加した。

観光地として自然に盛り上がり、入場も駐車場も無料。あるのは遊歩道と転落防止の低い柵のみだ。「長く滞在する価値がある」「自然は本当に奇妙だ」。SNSでは中国語や韓国語で絶賛する投稿が並ぶ。

 スマホや自撮り棒を抱えた多くの観光客が、エメラルドグリーンを収めたベストショットを求め、低い柵に沿って歩き鈴なりになって進む。雄大な十勝岳連峰をバックにした地点がベストショットになるという。魅力をそのまま伝えるだけではない。冬には池を夜にライトアップし、幻想的な風景を演出する。観光客が少なかった時期にも集客につなげている。

周囲の自然に手を入れない一方で、駐車場を含めた交通渋滞やトイレの整備が課題になっている。カラマツは北海道が管理し、池の内側は町有地。

 美瑛町によると、同町に宿泊した外国人は2017年度は3万9800人と、5年前から約5倍に増加した。「日本で最も美しい村」連合にも名を連ねるほど美しい風景を誇るが、訪日客が興奮して畑に侵入するケースも後を絶たない。町観光協会は定年退職した町民を巡回アドバイザーとして採用し、「畑・農道には絶対に侵入しないで」と観光客に呼びかけている。生活とのバランスを取りながら、人造湖の自然を生かした誘客ともてなしに知恵を絞っている。

記事・画像:2018年6月4日 日本経済新聞

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